築30年の中古住宅を購入したから、耐震補強を含めたリフォームをしたいということで依頼されました。もともと、間口が狭く南側に壁が全くありませんでした。壁をめくってみると、一見すると筋かいが入っていました。しかし、詳細に確認すると、この筋かいは耐力壁として機能していない状態であることが判明しました。
何が問題なのか?
この状況を見てなにが問題なのかと言いますと、
筋かいが柱にかかっておらず、柱間は600mmしかない
写真の通り筋かいは確かに入っています。しかし、その筋かいは柱にかかっていないという状況です。
本来、筋かいは、柱-土台-梁を結ぶことで初めて力を伝達します。今回のケースでは、足元は土台にかかっていますが、上部側に柱が存在していません。これでは地震力が正しく伝わらず、意味を持ちません。
また、現状において柱間は、600mm程度しかありません。通常、筋かいは柱間、900mm以上ないと意味が無く、耐力壁とはいえません。仮にも柱の足元に筋かいを設置したところで、今回のように600mm程度では、耐力壁とはいえません。
筋かい金物が未設置
また、本来、付いていなければならない筋かい金物が取り付けられていません。筋かいは、金物によって接合部を固定しなければ、地震時に抜けたり外れたりします。金物なしの筋かいは、耐力壁とは認められません。
※ 耐力壁については、こちらの記事を参考にして下さい。
なぜこのような施工が起きるのか?
考えられる原因は以下です。
- 設計段階での理解不足
- 現場判断による簡略施工
- 確認申請時の図面と実施工の不一致
- 増改築時の中途半端な補強
築年数の古い住宅では、このような「効いていない補強」が多く見られます。
放置するとどうなるか?
この状況を放置するとどうなるのでしょうか。
- 地震時にその壁は抵抗力を持たない
- 南側に壁がないのと同じで建物のねじれが大きくなる
- 倒壊リスクが高まる
つまり、地震時には危険な状態なのです。
改修方法
こうなると地震時に倒壊しないよう補強が必要となります。そのためにはどのような方法が考えられるかといいますと、
構造用合板による補強(現実的で有効)
筋かいの上から構造用合板を施工します。構造用合板は、
✔ 壁幅600mmでも耐力壁として算定可能である
✔ 面材として地震時の力を分散することできる
✔ 施工性がしやすい
というメリットがあります。適切な釘ピッチ、計算に基づき柱頭・柱脚金物を施工すれば、確実な耐力壁となります。
基礎の補強(より本質的な改善)
今回の住宅は無筋コンクリート基礎でした。無筋基礎は、
- 地震時に容易に壊れる
- 引張力に弱い
- アンカーボルトの保持力が弱い
という構造的弱点があります。これを既存基礎にだかせるように鉄筋コンクリート造の基礎をつくると、耐震性能は大きく向上します。
この事例から学ぶこと
この壁は、筋かいはあったのですが、実際には、耐力壁として機能していませんでした。住宅の安全性は、“見た目”では判断できません。壁を開けたからこそ分かった事実です。
✔ 筋かいは「入っている」だけでは意味がない
✔ 接合部と柱配置が最重要
✔ 金物なしの筋かいは耐力壁にならない
✔ 見えない壁の中にこそ真実がある
✔ 古い住宅は開けて確認する価値がある
中古住宅やリフォーム時には、
✔ 壁内確認
✔ 接合金物確認
✔ 基礎の種別確認
を行うこと。それが、本当に安心できる住まいづくりへの第一歩です。


