壊された基礎

白アリ防蟻工事中に、無断で住宅の基礎を壊された実例を建築士が詳しく解説。基礎を壊す危険性、耐震性への影響、適切な補強方法、人が通れない床下への対応策、家づくりで事前に行うべき対策まで、わかりやすく説明します。 住宅・建物の調査・診断事例
白アリ防蟻工事で「勝手に基礎を壊された」事例

 「防蟻工事をしたのですが、床下からコンクリートを壊すような音がしていた。」このような相談を受けて調査に伺うと、驚くべき状況になっていました。床下の基礎が、何の説明もなく、人が通れるように大きく破壊されていたのです。

 写真を見ると、本来連続しているはずのコンクリート基礎が大きく壊され、床下にはコンクリート片が散乱しています。しかも、この工事は施主に何の説明もなく行われていました。

 基礎は建物を支える最も重要な構造部分の一つです。そこを無計画に壊すということは、単なる「作業をするための穴あけ」では済まされない重大な問題となる場合があります。

なぜ基礎を壊したのか?

 昔の木造住宅では、床下の区画ごとに十分な「人通口」が設けられていないことがあります。そのため、防蟻業者が床下へ入ったものの、奥へ進めない、隣の区画へ移動できない、薬剤散布ができないという状況になることがあります。

 そして今回のように、「作業できないから基礎を壊して通路を作る」という乱暴な方法が取られてしまうことがあるのです。しかし、本来これは簡単に行ってよい工事ではありません。基礎は建物を支える構造体です。壁を勝手に壊すのと同じくらい重大な行為なのです。

基礎を無計画に壊すとどうなるのか?

 住宅の基礎は、ただ建物を載せているだけではありません。基礎には、

  • 建物の重さを支える
  • 地震の力を受け止める
  • 建物全体を一体化する

という重要な役割があります。特に布基礎では、基礎が連続していることで建物全体の強さを保っています。ところが、その途中を壊してしまうと、力の流れが途切れてしまいます。すると、地震時には壊した部分に力が集中しやすくなり、

  • 基礎にひび割れが発生する
  • 建物が変形しやすくなる
  • 壁や柱に悪影響が出る
  • 耐震性が低下する

可能性があります。つまり、「少し壊しただけだから大丈夫」という話ではないのです。

特に危険なのは「耐力壁の下」

 さらに危険なのは、耐力壁の下の基礎を壊してしまうケースです。耐力壁とは、地震や台風の横揺れに抵抗するための重要な壁です。この壁の力は、最終的に基礎へ伝わります。ところが、その下の基礎を壊してしまうと、壁の力をしっかり受け止めることができなくなります。例えば、

  • ホールダウン金物が効かなくなる
  • 柱が引き抜かれやすくなる
  • 耐震壁の性能を発揮できなくなる

といった危険性があります。つまり、「上の壁だけ丈夫でも、下の基礎が壊れていたら意味がない」ということなのです。

本来どうすべきだったのか?

 本来、防蟻工事を行う前には、床下の状況をきちんと確認する必要があります。例えば、

  • 人が床下を移動できるか
  • どこで行き止まりになるか
  • 配管が邪魔していないか
  • 人通口の大きさは十分か

などを調査しなければなりません。そして、もし床下移動が困難なら、「どうすれば壊さずに作業できるか」をまず考えるべきなのです。それを検討せず、いきなり基礎を壊してしまうのは非常に問題があります。

人が通れない場合はどうすればよかったのか?

 もし床下を人が通れなかった場合でも、方法は一つではありません。いろいろと方法があります。

床下点検口を増設する

 もっとも安全な方法は、新たに床下点検口を設けることです。例えば、

  • 押入れの床
  • 洗面所
  • 廊下収納

などに点検口を設け、別方向から床下へ入る方法があります。この方法なら、基礎を壊す必要がありません。

計画的に最小限の開口を設ける

 どうしても基礎開口が必要な場合には、どこを壊すのか、どの程度壊すのか、構造上問題ないかを事前に検討する必要があります。さらに、後でどのように補強するかまで計画しておく必要があります。「とりあえず壊す」というのは、本来あり得ない工事です。まして、事前に説明することなく、施主の許可なく壊すというのは、もっての外です。

工法自体を変更する

 場合によっては、

  • ベイト工法
  • 部分処理
  • 外周注入

など、人が全面的に床下へ入らなくても施工できる方法を検討することも可能です。つまり、「入れない=壊すしかない」というわけではないのです。

もし勝手に壊されたらどう補強するのか?

 このような場合、単にモルタルを塗って塞ぐだけでは不十分です。見た目が塞がっていても、構造的な強度が回復していない可能性があるからです。重要なのは、「基礎としての性能を回復させること」です。一般的には、

  • 既存基礎へあと施工アンカーを打ち込む
  • 鉄筋を定着させる
  • 型枠を組む
  • コンクリートを再打設する

という方法が取られます。こうすることで、新しいコンクリートと既存基礎を一体化させます。ただし、単にコンクリートを流し込むだけでは不十分で、

  • 鉄筋の定着長さ
  • コンクリート強度
  • 接合部分の処理

などを適切に行う必要があります。

場合によっては耐震補強も必要

 古い住宅では、そもそも基礎に鉄筋が入っていないケースがあります。その場合、単純な復旧だけでは十分でないことがあります。そのため、

  • 基礎の増し打ち
  • 耐震壁の追加
  • 金物補強

などを同時に行う場合もあります。つまり、「元に戻すだけ」では済まないこともあるのです。

家を建てる時にどうすれば防げたのか?

 実は、この問題は設計段階でかなり防ぐことができます。最近の住宅では、

  • 人が通れる人通口
  • 点検ルート
  • 配管スペース
  • 将来のメンテナンス動線

を考慮して設計することが重要です。家は建てて終わりではありません。将来、白アリ点検、配管修理、漏水調査、耐震補強など、さまざまなメンテナンスが必要になります。そのため、「将来、人が安全に床下へ入れるか」を考えて設計することが非常に重要なのです。

まとめ

 今回の事例は、「見えない場所だからわからないだろう」という非常に危険な工事の一例です。 基礎は建物を支える重要な構造体です。そのため、無計画に壊すことは、建物全体の安全性に大きな影響を及ぼす可能性があります。もし床下へ入れないのであれば、本来は、

  • 点検口の増設
  • 計画的な開口
  • 工法変更
  • 構造検討

などを十分行った上で、慎重に工事を進めるべきです。そして、もし勝手に壊されてしまった場合には、単なる補修ではなく、構造的な復旧・補強を行うことが重要になります。

 家づくりでは、「建てること」だけではなく、「将来安全に維持管理できること」まで考えておくことが、本当に良い住まいづくりにつながるのです。

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