耐震診断とはどのようなものなのか、そして実際にどのような方法で調査・判断を行うのかを、できるだけ分かりやすく解説していきます。住まいと命を守る第一歩として、耐震診断の方法と考え方を正しく理解していただければ幸いです。
既存木造住宅の耐震診断方法
既存木造住宅の耐震診断は、一般財団法人日本建築防災協会/国土交通大臣指定耐震改修支援センター「木造住宅の耐震診断と補強補法(2012年改訂)」にもとづいておこないます。
専門家が行う方法として、主に
- 一般診断
- 精密診断
の2つの方法があります。どちらも「地震に対してどれくらい安全か」を評価するものですが、
調べ方の深さと目的が少し違います。その違いを説明をします。
一般診断とは?
■ もっとも一般的な診断方法です
一般診断は、「今の家が大地震でどれくらい持ちこたえられるか」を、図面や現地調査をもとに総合的に評価する方法です。実際に、具体的にどういうことを調べるのかといいますと、
例えば、次のような項目です。
- 壁の量は足りているか
- 耐力壁のバランスは良いか
- 筋かいは適切に入っているか
- 柱頭・柱脚、筋かいに接合金物はあるか
- 基礎の状況はどうなのか
- 劣化や腐朽はないか
これらを数値化し、「評点」という数字で表します。そして、最終的に耐震改修が必要かどうかの判断をします。
■ 具体的な診断方法

一般診断は、天井や壁を破壊することなく、押入の点検口などから、天井裏・小屋裏に侵入して、状況を確認します。
壁の内部など隠された部分は見ることはできませんので、筋違い・柱の設置状況や劣化状況は不明な場合が多々あります。その際は、筋違いは「無」劣化状況は「有り」とします。ある程度は、状況から推測ということになります。
■ 評点の目安
- 1.5以上 … 倒壊しない
- 1.0以上~1.5未満 … 一応倒壊しない
- 0.7以上~1.0未満 … 倒壊の可能性がある
- 0.7未満 …倒壊する可能性が高い
一般診断は、補強が必要かどうかを判断するための診断です。一般診断の場合は、目視にて状況から判断しますので、推測の部分もあります。ですので、細かいところまでチェックする精密診断とは違い、安全をみて評価は低目にでます。最終的に耐震改修は、1.0以上になることを目指します。
評点については、こちらを参考にして下さい。
■ どのような場合に使うのか
「自分の家が地震に強いのか、まずは知りたい」という初期段階のとき、自治体の耐震相談や、簡易的な診断を受けるときなどに使います。
精密診断とは?
精密診断は、より詳細に計算を行う方法です。そのために、各々の部材がどのような状態なのか、詳細の調査が必要となります。
■ 一般診断との違い
- 柱や梁の一本一本の強さを計算
- 接合部の力の伝わり方まで検討
- 建物全体を構造計算的に解析
つまり、柱と梁を繋ぐ「金物」の種類、筋交いの端部の固定状況、そして、「どの部材がどれくらい力を負担するか」など、細かく目に見えない部分まで数値化します。
■ 具体的な診断方法

精密診断は、基本的にリフォームをすると決まっている場合にこのように天井や壁をめくり、柱・土台・梁が露になったら、使用することができます。
このような状態であれば、筋違いの設置状況、金物の設置状況、柱・土台などの腐食状況が明確にわかります。一般診断に比べ、評点は正確にでます。
■ どのような場合に使うのか
一般診断で、評点が1.0以下「倒壊の可能性がある」と判定された結果、
- 具体的にリフォーム(補強工事)を決意したとき
- 伝統工法(石場建てなど)や重要建築物であるとき
- 大規模改修を行う場合
- 特殊な構造で一般診断では正しく評価できないとき
など、より高度な検討が必要なときに行います。
なぜ通常は「一般診断」なのか?
通常、小規模の既存木造住宅においては、「一般診断」を使います。その理由は、
理由① 費用と効果のバランスが良い
精密診断は時間も費用も大きくなります。一般住宅では、壁・天井など破壊することなく、目視にて状況を確認します。そのために費用的にも低価格で行うことができます。
精密診断の場合、各々の部材の状況詳細が必要ですので、天井に必要に応じて点検口をつけたり、壁を破壊する場合もありますので、かなりの費用がかかる場合があります。
理由② 補強設計に十分使える
診断結果が悪く、補強が必要となった場合、一般診断においても、
- どこが弱いか
- どれだけ補強すればよいか
は十分把握できます。わかりやすく例えると…
- 一般診断 = 人間ドック
- 精密診断 = CTやMRI検査
といえます。まずは人間ドックで全体の状態を確認し、必要なら詳しい検査をする、というイメージです。
したがって、一般診断は細部が見えない分、計算上、少し厳しめ(安全側)に判定される傾向があります。行政としては、甘い判定で被害が出るよりも、厳しめに判定して補強を促す方が防災上のメリットが大きいため、一般診断が「標準」として採用されています。
当事務所においても、通常は、「一般診断」でもって診断します。そして、必要に応じて「精密診断」を行います。
理由③ 自治体の標準方法だから
多くの自治体の補助制度は、一般診断を前提としており、精密診断までは求められていません。行政の目的は、街全体の耐震化率を上げることです。高額で時間がかかる精密診断よりも、数時間で調査が終わり、費用も数万円程度(補助金で無料になることも多い)の一般診断を普及させる方が、より多くの市民に受診を促せます。
まとめ
- 一般診断: 自宅の「今」を知るための健康診断。行政の補助金もこれに基づきます。
- 精密診断: 実際に「治す(補強する)」ための準備。
まずは一般診断で家の弱点を把握し、もし数値が悪ければ、専門家と相談して精密診断へとステップアップするのが、最も合理的で安心な流れと言えるでしょう。
以下の記事も参考にしていたくと、さらに理解が深まります。
耐震診断(一般診断)の実例
それでは、耐震診断(一般診断)とは実際にどんな方法で行うのか、その結果よりどう判断するのか、「日本建築防災協会」による“木造住宅の耐震診断と補強方法(一般診断)”に準じて耐震診断を行いました。こちらで詳細を確認して下さい

耐震診断特集(幸せ住まいづくり講座)
当社が作成・運営しています「幸せ住まいづくり講座」では、耐震に関する関連記事を数多く掲載しています。基礎知識を身につけ、正しく知ることが大切です。住まいの安全を考える第一歩として、ぜひご一読ください。



