耐震改修計画策定

耐震診断後に行う耐震改修計画策定の内容と流れを解説。評点改善の考え方、補強方法、設計費・工事費の目安まで建築士が丁寧に説明します。

 耐震診断が終わり、評点が思ったより低かった場合、「早く工事しないと」と焦ってしまいがちです。ですが、耐震改修は“とりあえず工事”を始めるものではありません。まず必要なのが、どこが弱点で、どの補強が効果的で、費用や暮らしへの影響まで含めて整理する耐震改修計画の策定です。

 このページでは、耐震改修計画とは何をするものなのか、評点を1.0以上にするための代表的なポイント、そして費用の目安まで、詳細を解説します。

耐震改修計画の策定とは何をするもの?

 耐震改修計画の策定とは、耐震診断結果をもとに、建物の弱点を整理し、評点が改善する補強案を複数検討しながら、「どこを・どの方法で・どこまで」直すかを具体化する工程です。耐震改修工事の“設計図”をつくる段階と考えると分かりやすいです。

  • 弱点の特定(壁の不足・バランスの偏り・接合部の弱さ・基礎の問題・劣化など)
  • 補強メニューの検討(屋根軽量化、耐力壁、金物、基礎補強、劣化改善など)
  • 評点の改善見込み(どの補強でどれだけ上がるか)
  • 生活への影響と工事範囲(住みながら可能か、解体範囲はどこか)
  • 費用・工期の目安(設計費+工事費の概算)

 同じ「評点が低い家」でも、原因や適した対策は住宅ごとに異なります。だからこそ、計画策定での整理がとても重要になります。

評点1.0以上にするために押さえるポイント

 耐震改修でよく目標にされるのが評点1.0以上です。ここでは、評点を引き上げる代表的な方法としては、

  1. 屋根の軽量化
  2. 耐力壁の増設
  3. 接合金物の設置
  4. 基礎の補強
  5. 劣化改善(外壁のひび割れ・雨漏り・腐朽・シロアリ)

です。これを説明していきます。

ポイント1:屋根の軽量化

 ポイント:建物の上が重いほど地震時に揺れが大きくなり、倒れやすくなります。屋根を軽くすると、同じ壁量でも建物の負担が減り、評点が改善することがあります。

  • 瓦屋根から軽量屋根材へ変更する
  • 葺き土がある場合は撤去できるか検討する
  • 雨漏りや下地劣化がある場合は同時に改善する
瓦や葺き土が残る屋根は、建物の重心が高くなり、揺れが大きくなりやすい状態です。
瓦や葺き土が残る屋根は、建物の重心が高くなり、揺れが大きくなりやすい状態です。
軽量な屋根材(スレート)に替えることで、建物全体の負担が軽減され、耐震性が向上します。
軽量な屋根材(スレート)に替えることで、建物全体の負担が軽減され、耐震性が向上します。

ポイント2:耐力壁の増設

 ポイント:評点が低い住宅では、そもそも耐力壁が足りない、または配置のバランスが悪いケースが多く見られます。筋かいや構造用合板を追加し、必要な壁量とバランスを確保します。

  • 筋かいを追加する(位置・向き・金物が重要)
  • 構造用合板で壁を強くする(釘ピッチが重要)
  • 偏りを直し「ねじれにくい家」にする
解体後の状況。筋かいや構造用合板がなく、地震力を受け止めにくい状態です。
解体後の状況。耐力壁(筋かいや構造用合板)がなく、柱だけで地震力を受け止めにくい状態です。揺れると壊れそうです。
計画に基づき、必要な位置に耐力壁を設置します。向きや固定方法が重要です。
計画に基づき、必要な位置に耐力壁を設置します。このように耐力壁を設置することにより揺れに強くなります。

耐力壁:地震や台風などの横からの力(水平力)に抵抗して、建物の変形(ねじれ・傾き)を抑え、倒壊を防ぐための「構造上重要な壁」のこと。木造では主に筋違い・構造用合板・耐力面材などでつくられ、バランスよく配置することが大切。

ポイント3:接合金物の設置

 ポイント:古い木造住宅では、柱と梁、柱と土台のつなぎが弱く、地震時に抜けたり外れたりしやすいことがあります。必要な箇所に金物を設置し、力がきちんと基礎まで伝わるようにします。

 これは、力の大きくかかるところにより強い金物を入れるということになりますので、どのよう力がかかるのか、そして、そこにはどのような金物が必要なのかを計算により決めます。

  • 柱頭・柱脚金物の追加
  • ホールダウン金物の必要性判断(引抜き対策)
  • 金物は「付ければ良い」ではなく、設計根拠が重要
築古の建物には、柱頭・柱脚に接合金物がついていないことが多い。
築古の建物には、柱頭・柱脚に接合金物がついていないことが多い。
柱頭・柱脚金物を設置し、地震力が基礎まで伝わるようになります。
柱頭・柱脚金物を設置し、地震力が基礎まで伝わるようになります。

ポイント4:基礎の補強

 ポイント:上部だけ補強しても、基礎が弱ければ地震力を受け止めきれません。無筋基礎、ひび割れ、鉄筋不足などがある場合は、基礎補強を含めた計画が必要になります。

  • 無筋基礎の補強(増し打ち等)
  • ひび割れ・欠損の補修
  • 土台の状態(腐朽・蟻害)も併せて確認する
鉄筋探査機にて鉄筋の有無を調査
鉄筋探査機にて鉄筋の有無を調査。これにより、この基礎は無筋であることが判明。
既存の基礎の抱かせて新しい鉄筋コンクリート造基礎をつくる

ポイント5:劣化改善(外壁のひび割れ・雨漏り・腐朽・シロアリ)

 ポイント:外壁のひび割れ、雨漏りや腐朽、シロアリ被害がある状態では、せっかく補強しても強度が出ません。耐震改修の前に、または同時に、劣化の原因を止めて健全な状態に戻すことが大切です。

  • 雨漏り原因(屋根・外壁・開口部)を止める
  • 腐朽部材・蟻害部材の交換や補修
  • 再発防止(防水・換気・防蟻)の考え方
外壁のひび割れ
外壁に大きなひび割れがある。この部分から水が浸入し下地・柱・梁・土台などの構造材が腐食する。
ひび割れ部分をVカットして、防水剤を入れたところです。
ひび割れ部分をVカットして、防水剤を入れる。この上に塗装かけて美しく仕上げる。

計画策定の実際

 以上の補強のポイントを押さえながら、耐震計画策定(設計)を進めていきます。ここでは、過去に実際に行った実例で説明をします。

現況の確認

 まずは、耐震診断により現況がどうなのかを再度、確認します。具体的には、前頁で説明してありますので再度、確認します。

  現況はこちらで確認⇒

計画策定

現況を踏まえたうえで計画策定を行っていきます。計画策定におけるポイントとしては、

  • 水廻り特に浴室を広くして洗面脱衣室を新設し、この部分に鉄筋コンクリート造の基礎を新設し、耐力壁を設ける。
  • 2階の上部構造評点は、さほど悪くないので、既存筋違いを利用し、柱頭金物・柱脚金物を設置する。
  • 1階は、全体的に耐力壁が不足しているので、バランスよく耐力壁(筋違い及び構造用合板)を設置する。
  • 耐力壁には柱頭金物・柱脚金物そして、筋違いには筋違い金物を設置する。
  • 耐力壁を設置する部分には、大きな力がかかるので、それに耐えるために基礎補強する。
  • 劣化改善として、外壁に多くひび割れが見られるので、ひび割れを修繕する。
  • もともとの浴室廻りがタイル貼りでひび割れ、目地のコーキング切れ、防水劣化がみられたため、防水性の高いユニットバスに取り替える。

耐力壁の配置(太い赤線部分)は以下の通りとなりました。

■ 2階計画図

■ 1階計画図

その結果評点は、以下の通りです。

■ 現況上部構造評点 0.37

■ 計画上部構造評点 1.51

現況の総合上部構造評点は、0.37で計画の総合上部構造評点は、1.51まで上がりました。

費用の目安(設計費+工事費)

 耐震改修では、工事費だけでなく計画策定(設計)にかかる費用も重要です。計画策定は「どの補強が必要か」「どこまでやるか」を決める工程で、ここが曖昧だと工事費もぶれやすくなります。

計画策定・設計費の目安

 設計費は、建物規模、図面の有無、追加調査の範囲、補強案の検討数などで変動します。目安としては、数十万円程度からを想定しておくと整理しやすいです。

※最終的には、建物条件と支援範囲(計算・図面作成・見積調整・監理の有無)によって個別にお見積りします。

耐震改修工事費の目安

 工事費は、補強の範囲(部分か全体か)、劣化状況、解体復旧の量、屋根の仕様変更の有無などで大きく変わります。一般的には、部分補強は数十万円〜、全体的な補強になると数百万円規模になることが多いです。

※費用は「安いほど良い」ではなく、建物に合った補強ができているかが最重要です。計画策定で根拠を整理することで、無駄を減らし、必要な部分に確実に費用を使えるようになります。

まとめ|耐震改修は「計画」でほぼ決まります

 耐震改修は、工事そのものよりも、事前の「計画策定」で成否が大きく決まります。どこが弱点で、どの補強が効果的で、費用と暮らしへの影響がどれくらいかを整理したうえで工事に進むことで、納得感が高く、失敗の少ない改修につながります。

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ここまでお読みいただき、ありがとうございます。住まいの購入やリフォームは、多くの方が「本当にこれで大丈夫なのか」と不安を感じながら進めています。こんな方は、一度ご相談ください。

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