今回ご相談をいただいたのは、築約7年、築浅の木造2階建て住宅です。「大雨が降るたびに床下へ水が入り、溜まってしまう」という不安を抱えておられ、床下の状況確認と原因調査のご依頼を受けました。築年数が比較的新しい住宅であっても、このようなトラブルが起こることは決して珍しくありません。
大雨が降った次の日に、お伺いしました。実際に床下を確認したところ、建物全体にわたり約1~2cm程度の水が溜まっている状態でした。幸いにも、現時点では土台の腐食や床組の腐朽、深刻なカビの発生は見られず、早期に発見できたことは不幸中の幸いと言えます。
しかし、このままの状態を放置すれば、
・木部の腐朽
・シロアリ被害
・構造耐力の低下
へと進行する可能性があります。木造住宅にとって「水」は最大の敵です。早期発見・早期対策が極めて重要な事例でした。
外部確認

外部基礎の外周をみると、基礎天端(土台)から地盤まで約20cmしかありませんでした。
本来、木造住宅では基礎天端から地盤面まで約35~40cm確保するのが一般的設計です。今回のケースでは、本来より約15cmも地盤が高くなっていました。つまり、後から盛土して、基礎に土をかぶせたという状況です。
なぜ水が侵入したのか?
木造基礎は通常、二段階施工です。
① ベースコンクリート打設
② 立ち上がりコンクリート打設
この2回の打設の接合部を「打継ぎ部」と呼びます。この部分は完全な一体構造ではないため、
✔ 微細な隙間が生じる可能性
✔ 水の侵入口になりやすい
という弱点があります。特にこの打継部分が綺麗に清掃できていないとしたら、水が入るリスクが高まります。これを防止するために、止水板(止水プレート)を設置します。しかし、今回の住宅では、
✔ 止水板が施工されていなかった可能性がある。
✔ 外部地盤が高くなって水圧がかかった。
この2つが重なり、打継ぎ部から水が侵入したと判断されました。


本来は、基礎天端+40cm程度の位置に地盤面が来る設計です。しかし今回、 地盤面から基礎天端までが25cm、つまり、外の地盤が内部床下より15cmも高い状態になっていました。これは水の流れの観点から見れば、「外から中へ水が押し込まれる条件」が整っている状態です。

改善方法
盛土の撤去
外部の地盤を本来の高さまで下げることが最も確実な対策です。
✔ 水圧がかからなくなる
✔ 侵入リスクが大幅に低減
これは構造的に正しい改善方法です。
外部打継部の防水処理
外側から打継部に防水処理を施す方法もあります。ただし、
✔ 防水材の耐用年数は15~20年程度
✔ 定期的な再施工が必要となる場合がある
根本解決というよりは「抑制策」となります。
この事例から学ぶこと
今回の事例から、いくつもの大切なポイントが見えてきます。
まず一つ目は、築年数が浅くても漏水は起こり得るということです。「まだ新しい家だから大丈夫」という思い込みは、ときに大きなリスクを見逃す原因になります。
次に、基礎の外周地盤は、内部の地盤よりも50mm程度は低くする、という基本原則です。基本的に、建物は、基礎天端から400mmの高さを確保する前提で設計され、内部は350mmといのが通常です。外部地盤が想定より高くなれば、水が建物内部へ侵入しやすくなります。水が浸入しなくとも、外部からの湿気が内部に呼び込み、床下はずっと、湿気た状態となります。
また、基礎には「打継ぎ部」と呼ばれるコンクリートの継ぎ目があります。この部分は構造上どうしても一体ではないため、水に対して弱点となりやすい箇所です。そのため、本来は水の侵入を防ぐための止水板が非常に重要な役割を果たします。止水板が適切に設置されているかどうかは、見えない部分ですが大切なポイントです。そして何より重要なのは、床下浸水は早期発見が命だということです。
まとめ
木造住宅は、実は「水」に非常に弱い構造です。水は一気に壊すのではなく、気が付かないうちに構造を劣化させていきます。木部を腐らせ、やがてシロアリを呼び込み、構造耐力をじわじわと奪っていきます。
だからこそ、水の侵入は絶対に軽視してはいけないのです。今回のケースは、「致命的な被害になる前に気づけた事例」でした。
もしこの状態をあと5年、10年放置していれば、
・土台・床の腐食
・シロアリ被害
・大規模な改修工事
へと発展していた可能性は十分にあります。床下は普段見ることのない場所です。しかし、見えないからこそ、定期的な確認が必要なのです。


