中古住宅をチェックするうえで、基礎コンクリートの状態確認は最も重要なポイントの一つです。基礎は建物全体を支える土台であり、ここに問題があると、いくら外観や内装がきれいでも、安心して住み続けることはできません。
基礎のひび割れ、欠け、鉄筋の露出、補修跡、不同沈下の兆候などは、耐震性や耐久性に直結するサインです。しかし、これらの不具合は見落とされやすく、購入後に気づいても簡単には直せないケースが多いのが現実です。このページでは、その具体的なチェックポイントと判断基準をそれぞれ項目別に具体例をあげて解りやすく説明します。
立上りの基礎コンクリートの高さは適切か
一般的に基礎の高さは地盤面から最低400mm必要です。この高さが低いようであれば、地盤面からの雨の跳ね返り土台にあたり、土台が湿気て腐食していきます。また、この高さが確保されていないと、床下の点検をするにあたり、人がもぐっていけないということになります。

こちらの基礎が健全な基礎です。コンクリートが美しく、ひび割れ、ジャンカ、鉄筋の露出などありません。地盤面からの高さも十分にあります。
■ 事例

これは、地盤面から基礎の高さが300mmしかありません。これでは、雨が降ると、地盤面からの跳ね返りの水が土台にあたり、土台が腐食していくことになります。

こちらの場合は、基礎に土がかぶっています。基礎が土にかぶっている場合は、土の中に含まれている水がコンクリートの継目やひび割れから床下に浸入することがあります。そうなると床下が湿気た状態になり、白蟻が繁殖したり、床がどんどんと劣化していきます。
立上りの基礎コンクリートにひび割れはないか
基礎のコンクリートにひび割れ(クラック)があると、その部分から水が浸入し、中に入っている鉄筋が腐食することになります。鉄筋が腐食すると堆積が膨張し、コンクリートに圧力をかけ、いずれは、コンクリートがめくれます。コンクリートがめくれると、鉄筋が露出することになり、さらに鉄筋が腐食し、著しく基礎の強度が低下するということになります。
■ 事例

基本的にひび割れの許容値は、0.3mmです。クラックスケールで実際にクラックの幅を測定し、その幅が0.3mmより大きいか小さいかを確認します。0.3mm以上であれば、補修が必要となります。

こちらは、換気口廻り(開口部)に発生しているひび割れです。換気口廻りは鉄筋がないために通常よりも弱いために補強の鉄筋が必要となります。その補強筋が入っていないとひび割れが発生しやすくなります。
小さいひび割れ(0.2mm以下)であれば、さほど心配はないのですが、大きなひび割れ(0.3mm以上)であれば、構造的に問題がある可能性があり、補修もしくは補強が必要となります。
鉄筋は入っているのか?
最近では、基礎に関しても、どのように鉄筋を入れるのかを構造計算か、もしくは、仕様書により決めるのですが、昭和50年代以前はそのような決まりはなく、無筋である場合が多々あります。また、仮に鉄筋が入っていたのしても、間隔が広かったり、劣化したりして、現在の基準に適合していない場合がほとんどです。

鉄筋探査機を用いて、基礎コンクリート内部に鉄筋が配置されているかを確認しています。
本機器では、表示が赤の場合は鉄筋の反応があり、青の場合は鉄筋が検出されていないことを示します。この測定結果では青表示となっており、当該位置には鉄筋が入っていない可能性が高いと判断されます。
鉄筋が入っていない場合の注意点
基礎コンクリートに鉄筋が入っていない場合、曲げや引張に対する抵抗力が小さくなります。特に不同沈下や地震時には、ひび割れが発生・拡大しやすく、耐久性の低下につながる恐れがあります。すべての基礎に必ず鉄筋が必要というわけではありませんが、設計意図や施工状況を確認することが重要です。
構造上の影響と考え方
鉄筋は、コンクリートの弱点である引張力を補う重要な役割を担っています。無筋の基礎は、軽微な荷重条件では問題が表面化しにくいものの、長期的にはひび割れや欠損が生じやすくなります。現状の劣化状況や建物全体のバランスを踏まえ、補修・補強の必要性を総合的に判断することが大切です。
設計図書との照合の重要性
鉄筋の有無は、現地調査だけでなく設計図書との照合が重要です。図面上では鉄筋が入る計画となっていても、実際の施工で省略されているケースや、増築部分のみ無筋となっている場合があります。現況と図面の食い違いを確認することで、構造上のリスクや補修の必要性を正しく判断できます。
中古住宅購入時の基礎チェックポイント
中古住宅を検討する際は、基礎のひび割れの有無だけでなく、その原因や鉄筋の有無にも注目することが大切です。無筋基礎であっても直ちに危険とは限りませんが、不同沈下や大きなひび割れが見られる場合は要注意です。専門家による調査で現状を把握することが、安心につながります。
無筋基礎の場合の補強についての考察
無筋基礎とは、基礎コンクリートの中に鉄筋が入っていない、もしくは極めて不十分な基礎を指します。昭和40~50年代以前の住宅では珍しくなく、当時は構造計算や配筋基準が明確でなかったため、現在の基準から見ると耐震性に不安が残るケースがあります。
無筋基礎=即危険ではない
まず重要なのは、無筋基礎だからといって、直ちに危険と判断する必要はないという点です。
長年大きな沈下やひび割れがなく、建物全体の変形も見られない場合は、現状で安定しているケースもあります。ただし、地震時の粘り強さや、将来的な劣化に対する余裕は小さいと考えるべきです。
補強が必要になる代表的なケース
次のような場合は、補強を前向きに検討すべきです。
- 0.3mm以上の構造クラックが複数確認される
- 不同沈下や建物の傾きが見られる
- 耐震診断で耐震性能が不足している
- 大規模リフォームや耐震改修を計画している
主な補強方法の考え方
無筋基礎の補強は、建物を壊さずに「後から強くする」方法が基本となります。
① 基礎増し打ち補強
既存基礎の内側または外側に鉄筋を組み、新たにコンクリートを打設して一体化させる方法です。最も一般的で、耐震補強と併用されることが多い工法です。
② 基礎部分補強(必要箇所のみ)
すべてを補強するのではなく、耐力壁の下やひび割れが集中する部分のみを重点的に補強する方法です。費用を抑えつつ、合理的な補強が可能です。
③ 鋼材・炭素繊維などによる補強
状況によっては、鋼板や繊維系材料を併用して補強するケースもあります。ただし、基礎形状や劣化状況によって適否が分かれます。
補強計画で最も大切なこと
無筋基礎の補強は、「とにかく強くする」ことが目的ではありません。現在の建物状態・地盤状況・将来の使い方を踏まえ、必要十分な補強を選ぶことが重要です。そのためには、現地調査と耐震診断を行い、専門家の判断をもとに計画することが欠かせません。
基礎チェック記事の締め
基礎の状態は、外観や内装のように簡単にやり直せるものではありません。ひび割れの有無、クラックの幅、不同沈下の兆候、そして鉄筋の有無――これらはすべて、建物がこれまでどのように使われ、どのような力を受けてきたかを示す重要なサインです。
調査で何らかの指摘があったとしても、すぐに「危険」「買ってはいけない」と結論づける必要はありません。大切なのは、現状を正しく知り、今後どう向き合えばよいかを整理することです。基礎のチェックは、不安をあおるためのものではなく、安心して住み続けるための判断材料を整えるための第一歩なのです。
耐震補強編への導入
基礎の状態を確認したうえで、次に考えるべきテーマが「耐震性」です。特に、無筋基礎や大きなひび割れが確認された場合、「この家は地震に耐えられるのか」「補強は必要なのか」という疑問が自然と生まれます。
耐震補強と聞くと、大がかりで高額な工事を想像される方も多いかもしれません。しかし実際には、建物の状態に応じて、必要な部分だけを、適切な方法で補強するという選択肢もあります。

