「1階居間の天井から雨漏りする」
「2階洋室のサッシュ廻りにカビが出ている」
「外壁のサイディングに大きなひび割れがある」
「家全体に湿気を感じる」
このようなご相談を受け、築9年の木造2階建て住宅の調査を実施しました。外観はサイディング貼りで全体的に黒っぽい汚れがあり、サイディングコーキング目地があちこちで切れて隙間ができています。
雨漏りの原因を明確にするために、その部分の天井とその階上にある洋室とホールのバルコニーに面する掃き出しサッシュ廻りの壁をめくったところ、漏水した際についた染みとカビが全体的に広がっています。その状況から見て、漏水したのは、数年前のものと思われます。
調査詳細
サッシュ廻りに散水する
原因を明確にするために、原因と思われるサッシュ廻りに散水調査を行いました。


内壁をめくって確認

散水している部分の内壁を破り、内部の状況を観察していると、5分程度、散水しただけで、漏水していることが確認されました。
構造用合板の下端から土台にかけて濃い雨染みが広がり、木材が繰り返し水を含んでいたことが分かります。変色の境界がはっきりしていることから、一度きりではなく継続的に、長年にわたり、浸水していた可能性が高い状態です。
この状態をこのまま放置すると、木材の腐朽やカビの進行、さらには金物の錆びにもつながり、構造耐力の低下を招く恐れがあります。早期の原因特定と適切な補修が不可欠な状況です。
外壁をめくって確認

外壁をめくったサッシ下部の状況です。防水シートとサッシまわりの防水テープの取り合いが不十分で、隙間が生じている様子が確認できます。本来はサッシのフィン部分に防水テープを確実に密着させ、その上から防水シートを重ねる必要がありますが、施工が甘いため水の侵入経路ができています。この状態では、コーキングが劣化すると容易に雨水が内部へ回り込む危険性があります。
原因の考察
この結果により、漏水の原因は、FRP防水とサッシュ廻りの接合部分からと断定しました。また、その他の個所にも同様に漏水が確認され、サッシュ廻りをコーキングすることにより、漏水が止まったということですので、サッシュ廻りからの漏水は明らかとなっています。
このことにより、この部分だけでなく、他の全てのサッシュ廻りからも同様に漏水している可能性がある。このような状態であれば、耐力壁となっている構造用合板までも腐食している可能性があり、全体的な調査が必要と思われます。
本当の原因は「2次防水の施工不良」
外壁内部を見ると、
- 防水シートがめくれている
- サッシフィンと防水テープの接着が不十分
- FRP防水との取り合い部分が浮いている
という状態でした。つまり、※1次防水(外壁・コーキング)と※2次防水(防水テープ・防水シート)の両方が正常に機能していなかったのです。試しに防水テープを正しく貼り直し、再度散水すると 漏水は止まりました。原因は明確です。
1次防水と2次防水 住宅の防水は「二重構造」で守られています。まず外壁材や屋根材、サッシまわりのコーキングなど、外から見える部分で雨を防ぐのが1次防水です。しかし強風や経年劣化で水が入り込むこともあります。そのとき最後の砦となるのが、壁の内側にある2次防水です。防水テープや防水シートで、見えない部分ですが、この2段構えが健全に機能して初めて、雨漏りを防ぐことができるのです。
なぜ怖いのか?
雨漏りは、
- 柱や土台の腐食
- カビの繁殖
- 白蟻被害
- 断熱材の性能低下
- 電気配線のショート
を引き起こします。これにより、健康被害が出たり、火災を起こしたり、地震時においては、倒壊の原因となります。
今回は築9年で発見されましたが、これが放置されていれば構造体の大規模補修になっていた可能性もあります。
補修方法の検討
この場合では、下地からの補修が必要と思われます。
- 外壁パネルを撤去
- 構造用合板とサッシフィンを露出
- 住宅金融支援機構仕様に基づき防水テープ再施工
- 防水シート重ね貼り
- サイディング復旧
- コーキング打ち替え
応急的なコーキング補修では再発リスクが高いため、下地からの根本的なやり直しが必要と判断しました。
この事例から学ぶこと
築年数がまだ浅い家でも、雨漏りは起こります。「まだ新しいから大丈夫」とは限りません。施工のわずかな不備や、見えない部分の処理不足が原因になることもあるのです。
また、窓まわりのコーキング(ゴム状の目地材)だけに頼るのは危険です。コーキングは紫外線や雨風で徐々に劣化します。ひび割れれば、そこから水は簡単に入り込んでしまいます。
本当に大切なのは、壁の内側にある防水テープや防水シートの施工です。これが正しく施工されていれば、万が一外から水が入っても内部まで到達するのを防げます。
そして、原因は「推測」ではなく、散水試験のような実際の検証で特定できます。水をかけて再現することで、どこから入っているのかがはっきり分かるのです。
何より重要なのは早期発見です。小さなシミの段階で気づけば、補修は最小限で済みます。放置すれば、構造材の腐食や大規模修繕へと発展してしまいます。


