今回ご相談を受けたのは、築約40年の木造2階建て住宅です。現地確認を行ったところ、2階バルコニーの手すり壁(モルタル仕上げ)に大きなひび割れが発生し、外壁モルタルが明らかに浮いている状態でした。
写真の通り、ひび割れは軽微なヘアークラックではなく、構造的な動きや内部劣化を疑うレベルの開口を伴っています。すでにモルタル層が下地から剥離している可能性が高い状況です。
想定されるリスク
雨水の長期侵入
これほど大きなひび割れがある場合、雨水が内部へ侵入している可能性は非常に高いと考えられます。特にバルコニー手すり壁は、
- 笠木部分
- 立ち上がり天端
- 接合部
から水が入りやすく、内部に滞留しやすい部位です。長期間放置されていると、
- 下地板(構造用合板)
- 柱・間柱
- 梁
- 1階柱頭部
まで腐朽が進行している可能性があります。
モルタル落下の危険性
モルタル外壁は、内部のラス金網によって固定されています。内部に水が入り続けると、
- ラス金網の腐食
- 固定釘の錆び
- 下地材の腐朽
が進行し、ある日突然、モルタルが剥落する可能性があります。これは通行人や居住者にとって重大な事故につながる危険があります。
1階への雨漏れ
手すり壁内部に侵入した水は、構造体内部を伝い、1階天井や壁内部へ漏水している可能性も否定できません。見えないところで腐食が進行しているケースは非常に多いです。
シロアリ被害の誘発
木材が湿潤状態になると、シロアリの被害を受けやすくなります。腐朽菌による劣化+シロアリ被害が重なると、木材は急激に強度を失い、耐震性能は著しく低下します。地震時には、その部分から局所的な崩壊が起こる可能性があります。
改善方法と調査の進め方
このような状態の場合、表面補修では絶対に解決しません。必要な対応は以下の通りです。
- 浮いているモルタルの全面撤去
- 下地材の状態確認
- 柱・梁の腐朽状況確認
- 必要に応じた構造補修
特に重要なのは、構造体の健全性確認です。もし柱や梁まで腐朽している場合、それは単なる外壁補修ではなく、「構造補強工事」の領域になります。
補修の難易度について
腐朽部を完全に交換する場合、
- 仮設足場
- 外壁全面撤去
- 部分的な構造解体
- 構造補強
- 防水再施工
- 外壁復旧
という大規模工事になります。現実的には、
・部分交換
・金物補強
・抱き合わせ補強
などの方法を検討するケースが多いですが、いずれにしても軽微な工事で済む可能性は低いと考えられます。
まとめ
この事例は、「外壁のひび割れ」ではなく「構造体劣化の入口」である可能性が高いケースです。築40年前後の木造住宅では、バルコニー手すり壁は特に劣化が進みやすい部位です。
✔ ひび割れ幅が大きく、広がっている
✔ モルタルが浮いている
✔ 叩くと空洞音がする
このような症状があれば、早急な詳細調査が必要です。放置すればするほど、工事規模も費用も大きくなります。


