今回ご相談を受けたのは、築約60年の木造平屋住宅です。所有者様から「地震に備えて耐震改修を行いたい」というご希望があり、建物の現地調査を実施しました。
耐震改修を行う場合、一般的には壁量を増やすために耐力壁の設置や金物補強などを検討します。しかし、耐震改修は「壁だけ補強すれば良い」というものではなく、建物全体のバランスを確認することが重要です。
調査で確認された基礎の状況
床下調査を行ったところ、上の写真の通り、本住宅の基礎は現在主流となっている鉄筋コンクリート造ではなく、レンガ積み基礎で施工されていました。
築年数の古い木造住宅では、当時の施工方法としてレンガや玉石を用いた基礎が多く採用されています。これらは当時の基準では一般的な工法でしたが、現在の耐震設計の考え方とは大きく異なります。
レンガ基礎には次のような特徴があります。
✅ 鉄筋が入っていないため引張力に弱い
✅ 地震時に基礎が割れたり崩れたりしやすい
✅ 壁補強を行っても荷重を受け止めきれない可能性がある
つまり、建物を強くしようとして壁を補強しても、その力を支える基礎が弱ければ、地震時に基礎から破壊されてしまう危険性があります。
なぜ「壁補強だけ」では不十分なのか
耐震改修では、建物に加わる地震力を以下の流れで支えます。
・屋根・2階床
・耐力壁
・土台・柱
・基礎
・地盤
このうち、どこか一つでも弱点があると、建物全体の耐震性能は成立しません。今回の住宅の場合、壁を補強すると建物自体は強くなります。しかし、その結果として地震力が基礎に集中し、基礎が先に破壊される可能性が高くなると判断されました。
本来望ましい改善方法
構造的に安全性を確保するという観点では、 建物全体の基礎を鉄筋コンクリート基礎へやり替えることが最も確実な方法です。
ただし、この方法は実質的に「建物を持ち上げて基礎を新設する」大規模工事となり、費用や工期の面から建て替えに近い計画になる場合が多くあります。
今回のケースでは、施主様が「建て替えではなく改修を希望されている」ことから、次のような方法を検討することになりました。
耐力壁直下の基礎部分のみを補強
耐力壁を新設する予定位置の直下について、
・既存レンガ基礎を撤去
・鉄筋を組んだ上でコンクリート基礎を新設
という「部分的な基礎改修」を行う計画です。この方法により、
✅ 耐力壁の荷重を確実に基礎へ伝達
✅ 地震時の破壊リスクを軽減
✅ 改修範囲を限定してコストを抑制
といった効果が期待できます。
築古住宅の耐震改修で特に重要な視点
築40年以上の木造住宅では、以下の点を必ず確認する必要があります。
■ 基礎形式の確認
木造の場合、以下のような基礎がありますが、
・鉄筋コンクリート基礎
・無筋コンクリート基礎
・レンガ基礎
・玉石基礎
基礎の種類によって、耐震改修の方針は大きく変わります。
■ 壁補強とのバランス
壁を強くするほど、基礎や接合部に負担が集中します。そのため、耐震補強では「どこを強くして、どこが弱点になるのか」を総合的に判断する必要があります。
■ 改修か建て替えかの判断
基礎や構造体の劣化状況によっては、部分補強よりも建て替えの方が合理的になる場合もあります。
この事例から学べること
耐震改修は「壁を増やせば安全になる」という単純な工事ではありません。建物は、基礎から屋根までが一体となって安全性を確保しています。特に築年数の古い住宅では、
👉 まず基礎と床下の状態を確認すること
👉 補強の効果が確実に発揮されるかを検証すること
が極めて重要です。耐震改修は、費用も大きく、工事内容によって安全性が大きく変わります。今回のように「補強しても効果が期待できないケース」も存在します。そのため、耐震改修を検討する際は、
・床下調査
・基礎状況確認
・構造バランス評価
を含めた判断が不可欠です。


