外部仕上げ状況のチェック

 中古住宅を購入する際、まず確認すべき重要ポイントのひとつが「外部仕上げの状態」です。外壁や屋根、バルコニー、開口部まわりといった外廻りは、常に雨風や日射にさらされており、わずかな劣化やひび割れが“住まいの寿命”を大きく左右します。

 特に木造住宅では、外部からの漏水が最も深刻なトラブルにつながります。目に見えない隙間やひび割れから雨水が入り込むと、内部の柱・土台などの構造材が腐朽し、耐震性まで損なう恐れがあります。こうした劣化は表面上では判断しにくく、購入後に大規模修繕が必要となるケースも少なくありません。

 安心して長く暮らせる家を選ぶためには、外部仕上げのチェックを丁寧に行い、潜在的なリスクを早い段階で把握することが欠かせません。このページでは、その具体的な確認ポイントを分かりやすく解説していきます。

チェック方法

 外部仕上げのチェックは、特別な道具や難しい知識がなくても、基本的なポイントを押さえることで十分に行うことができます。目で見て確認するだけでなく、実際に触れたり、動かしたり、音を確かめたりすることで、外装の不具合や建物の異変に気づくことができます。ここでは、中古住宅の調査において最低限確認しておきたい、外部仕上げの基本的なチェック方法について解説します。

基礎・外壁・軒裏・開口部のチェック

 まず、基礎・外壁・軒裏にひび割れがないかを目視で確認します。ひび割れを見つけた場合は、クラックスケールを用いて幅や深さを測定します。同時に、周辺の基礎や外壁、軒裏に「浮き」がないかも重要な確認ポイントです。

 基礎コンクリートのひび割れからは雨水が浸入し、内部鉄筋の腐食を招きます。モルタル仕上げの外壁や軒裏でひび割れが進行している場合は、モルタルを支えるメタルラスが錆び、さらにその下地の木材までも腐食する恐れがあります。

 外壁がサイディングの場合、特に劣化しやすいのは継ぎ目のコーキング材です。コーキングのひび割れや剥離は雨水を内部へ呼び込み、木部の腐朽につながります。浮きが疑われる部分は、打診棒や軽く叩くことで簡単に判断できます。また、開口部まわり(アルミサッシ・配管・換気扇まわり)のコーキングに隙間がないかも必ず確認します。

※1 モルタル:セメント・砂・水を練り混ぜた仕上げ材で、上から塗装して保護する。
※2 メタルラス:モルタル外壁の下地となる金網。防水紙の上に張り、その上へモルタルを施工する。
※3 サイディング:工場製のボード状外壁材。継ぎ目はコーキングで防水する。

外壁の状況を目視にてチェック。

外壁の状況を目視にてチェック。

打診棒で叩いて基礎コンクリートの浮きを確認

打診棒で叩いて基礎コンクリートの浮きを確認

軒裏の状況を目視にてチェック

軒裏の状況を目視にてチェック

サイディングの目地状況をチェック。

サイディングの目地状況をチェック。

外壁と配管の取り合い部分をチェック。

外壁と配管の取り合い部分をチェック。

サッシュ廻りのコーキング状況をチェック

樋・換気口のチェック

 樋(とい)は、屋根面に集まった雨水を確実に排水へ導く重要な設備です。樋が詰まっていたり外れていたりすると、雨水が外壁に直接当たり、漏水や軒裏の腐朽を引き起こします。

 縦樋は手で軽く揺らし、ぐらつきがないか確認します。軒樋は目視で歪み・破損・詰まりをチェックします。

 換気口は、内部の湿気を排出して結露やカビ、白蟻発生を防ぐ働きを持ちます。公庫仕様書等で必要面積が定められており、穴の詰まりがないかも確実に確認します。

縦樋の取り付け状況を目視にて確認

縦樋の取り付け状況を目視にて確認

軒裏換気口の状況を目視にてチェック

軒裏換気口の状況を目視にてチェック

バルコニーのチェック

 バルコニーは床と立ち上がり部分に防水が施されています。最も注意すべきポイントは「防水層の状態」と「出入口ドアとの取り合い」です。ひび割れや隙間がある場合、雨漏りしている可能性が高く、その下の梁・桁などが腐朽している恐れがあります。

 また、手すりの上部には笠木があり、笠木と壁との取り合いも雨漏りの多発部位です。手すり自体のぐらつきも必ず確認します。

バルコニーの防水状況をチェック

バルコニーの防水状況をチェック

防水とサッシュとの取り合い部分のチェック

防水とサッシュとの取り合い部分のチェック

手摺にガタツキがないかをチェック。

手摺にガタツキがないかをチェック。

笠木と壁との取り合い部分のチェック

笠木と壁との取り合い部分のチェック

屋根のチェック

 屋根の確認は危険を伴うため、多くの場合は下屋根の目視が中心となります。劣化状況は大屋根も下屋根も基本的には同様です。

 チェックポイントは、屋根材の破損・ひび割れ・ズレ、棟部分や壁との取り合いの隙間などです。特に取り合い部は雨漏りリスクが高く、丁寧な確認が必要です。

調査の結果(事例)

基礎・外壁・軒裏の不具合

 0.3mm程度の表面だけのヘアークラックであれば問題は少ないですが、明らかに水が浸入している大きなひび割れは要注意です。水が内部に入ると白蟻被害や木材・鉄筋の腐朽を進行させ、耐震性の低下につながります。

 モルタル壁の浮きは、ラスの腐食により下地との密着が失われているサインで、剥落の危険が高まります。地震時には特に危険です。

開口部・樋の不具合

 開口部まわりのコーキング劣化は水の侵入口となり、建物の寿命を大きく縮めます。コーキングは日当たりや環境で劣化速度が変わり、痩せ・ひび割れ・剥離が発生しやすい部位です。樋の詰まり・外れも外壁や開口部に大量の水を流し込み、漏水や腐朽の原因となります。

バルコニーの不具合

 防水層にひび割れがあると雨漏りへ直結します。モルタル上の細いひび割れなら問題は少ないですが、FRP防水・塗膜防水に直接入るひび割れは深刻です。

屋根の不具合

 瓦・スレート・金属屋根の寿命は概ね20~30年です。劣化すると割れ・ズレ・棟部分の隙間が生じ、雨水が侵入しやすくなります。

問題の対処方法

 外壁や軒裏のひび割れ、開口部のコーキング劣化を放置すると、白蟻被害や木材腐朽を進行させ、最終的には耐震性が大きく低下します。モルタル壁の浮きは剥落の危険があるため、浮いた部分は撤去し再施工が必要です。

 ひび割れのみで浸水が確認できない場合でも、防水材の注入補修が望まれます。樋やバルコニー防水の劣化も同様に補修が必要です。ただし、内部の柱・土台が腐朽している場合は交換が必要で、その場合は内外装の大規模改修となり、費用負担は大きくなります。

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