床下地盤面の大きな亀裂が示す危険信号

築45年の木造住宅で確認された床下地盤の大きな亀裂事例を解説。地震の影響が疑われる地盤の変形が建物全体に及ぼすリスクとは何か。耐震改修における基礎補強の重要性や、土間全面を鉄筋コンクリート化する改善方法、購入・改修判断のポイントまで詳しく説明します。 調査・診断事例
地盤と基礎が家の強さを決める

 こちらの写真は、築45年の木造2階建て住宅の床下です。耐震改修計画を依頼され、床下の調査を行いました。

 地盤面(土)が大きく割れて亀裂が走っている状況です。亀裂はおそらく、阪神淡路大震災により、当時の地盤変形や不同沈下の影響でこのような割れが残っているものと思われます。

 耐震改修の計画を立てる上で、この「床下の地盤の割れ」は見落としてはいけません。なぜなら、地盤・基礎が不安定なまま上部構造だけを強くしても、建物全体として安全性が確保できないからです。

状況から読み取れること

  • 床下の地盤面に、はっきりした亀裂がある
    土が乾燥して表面が細かく割れる程度ではなく、連続して深く割れているように見えます。これは「地盤が動いた」「沈下・隆起があった」可能性を示します。
  • 亀裂が建物直下で発生している
    建物の荷重がかかる範囲の土が変形した場合、床下の土に割れが残ることがあります。
  • 築45年という条件
    当時は、現代ほど地盤調査・地盤補強が一般化していなかった時代です。基礎仕様も「布基礎+土のまま(防湿不十分)」が多く、地盤由来の不具合が表面化しやすい条件がそろっています。

なぜ「地盤の亀裂」は危険なのか

  • 地盤が動いているサインの可能性がある
    地震時に地盤がせん断変形したり、ゆるい地盤が締め固められて沈下したりすると、床下の土に亀裂が残ることがあります。
  • 不同沈下につながるリスクがある
    地盤が均一に沈まず、建物の一部だけ沈むと、基礎にねじれや段差が生じ、上部構造にも歪みが連鎖します。
  • 耐震改修の“前提条件”を崩す
    耐力壁を増やしたり金物を強化しても、基礎が弱いと壁の力を地盤に伝えられません。いわば「強い壁を、弱い足に載せる」状態になります。

放置するとどうなるか(起こりうる不具合)

  • 基礎のひび割れ・沈下・段差が進行する
    地盤の変形が続けば、布基礎に不均一な力がかかり、クラックや沈下を誘発します。
  • 建物の傾き・建具不良が起こる
    玄関ドアが閉まりにくい、引き戸が動かない、窓が引っかかるなど、生活上の支障として現れます。
  • 壁の割れ・雨漏りリスクが増える
    建物が歪むと外壁の目地・サッシ周りが開きやすくなり、雨水の侵入口になります。
  • 耐震性の低下(地震時に弱点となる)
    基礎が弱いと、地震時に建物の揺れが増幅し、局部破壊が起きやすくなります。

耐震改修を行う際の考え方

  • 耐震補強は“力の流れ”を作る工事
    屋根・床・壁・基礎・地盤が一体となって初めて、地震力に抵抗できます。基礎が弱いと、壁補強の効果が出ません。
  • 古い布基礎は、改修後の力に耐えられないことがある
    改修で耐力壁を増やすと、基礎にかかる水平力も増えます。基礎がもともと想定していない力を受け、割れやすくなる場合があります。

改善策の基本方針

布基礎 → 土間全面を鉄筋コンクリート化(基礎補強)

「床下を一体の剛床・剛基礎化」すること

  • 土間コンクリートを打設し、床下地盤を固定する
    床下の土の変形を抑え、亀裂の進行や沈下の拡大を防ぎます。
  • 鉄筋を入れて“割れにくい床下”にする
    コンクリートは圧縮には強いですが引張に弱いので、鉄筋で補い、構造的に安定させます。
  • 布基礎と土間を緊結し、基礎の一体性を高める
    布基礎だけよりも、土間と一体になった方が強度が増し、地震時の変形を抑えられます。

計画時に必ず押さえるチェックポイント

  • 事前に地盤状況の把握(沈下の有無)
    亀裂が“過去のもの”か、“現在も進行中”かで対応が変わります。レベル計測、建物の傾き確認は必須です。
  • 基礎の現状確認(ひび割れ・鉄筋の有無)
    築45年だと無筋基礎や鉄筋量不足もあり得ます。基礎補強計画の前提になります。
  • 床下の湿気対策(防湿・換気)を同時に考える
    土間コンを打つなら、防湿シート・防湿処理の設計が極めて重要です。湿気が残ると木部劣化を招きます。
  • 配管・束石・束柱の納まり整理
    土間コンを施工する前に、給排水管の位置・勾配、点検性を確保します。後から直せない箇所です。

購入や改修の判断基準(実務的な見方)

 もし、これが中古住宅購入時に発見された亀裂であると、どのような判断基準としたらいいものかを考察してみます。

買ってよい可能性があるケース

  • 亀裂が古く、沈下が進行していない
    レベル計測で傾きが安定している、建具不良が限定的などの場合。
  • 基礎補強+土間の鉄筋コンクリート化で合理的に改善できる
    工事範囲・費用が見合い、改修後の性能を見通せる場合。

慎重に検討すべきケース

  • 不同沈下が進行中、傾きが大きい
    これは基礎補強だけで済まず、地盤補強・沈下修正まで必要になる可能性があります。
  • 基礎の劣化が深刻(崩れ・大きなクラック・欠損)
    土間だけで解決せず、布基礎の増し打ち・新設レベルになることがあります。
  • シロアリ・腐朽・漏水など複合劣化が重なっている
    足元の問題に加え、構造材交換も必要となり、費用が跳ね上がります。

この事例から学ぶこと

 床下の土に入った亀裂は、一見するとただの乾燥割れのように見えることがあります。しかし、それは単なる表面的な現象ではなく、地盤が過去に動いた、あるいは現在もわずかに変形している可能性を示す重要なサインであることがあります。たとえ見た目が小さな割れであっても、その背後に地盤の不同沈下や支持力のばらつきが隠れていれば、建物全体の安定性に直結します。床下という“見えにくい場所”だからこそ、慎重な判断が求めらます。

 耐震改修を行う際にも、まず前提とすべきなのは足元、すなわち地盤と基礎の健全性です。壁を増やしたり、金物を補強したりすることはもちろん重要ですが、それらの力を受け止める基礎が弱ければ、本来の耐震性能は発揮されません。上部構造だけを強くしても、力を地盤へ確実に伝えられなければ、本質的な安全は確保できないのです。耐震改修とは、建物全体の力の流れを整える工事であり、その出発点は常に足元にあります。

 基礎補強は、決して安価な工事ではありません。しかし、それは単なる修繕ではなく、これからも安心して住み続けるための「将来への投資」といえます。住まいは家族の命を守る場所であり、その安全性を支える基礎部分は最も重要な領域です。長く暮らすことを前提とするならば、基礎補強は、最優先で検討すべき工事です。

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ここまでお読みいただき、ありがとうございます。住まいの購入やリフォームは、多くの方が「本当にこれで大丈夫なのか」と不安を感じながら進めています。こんな方は、一度ご相談ください。

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