軒樋詰まりによるオーバーフロー

築35年の木造住宅で発生した軒樋の詰まりとオーバーフロー事例を解説。落葉による排水不良が外壁劣化や雨漏り、構造腐朽へ発展するリスクとは何か。改善策や購入時のチェックポイント、買ってよいケース・慎重に検討すべき判断基準まで、専門家の視点で詳しく説明します。 調査・診断事例
築35年木造住宅・落葉による排水不良のリスク

 お客様から、中古住宅を購入したいから、見て欲しいという依頼で調査をしました。この物件は、築35年の木造2階建て住宅です。

 1階の下屋根部分の軒樋に排水口が設けられ、縦樋へと接続されていますが、上部に大きな広葉樹が覆いかぶさり、秋には大量の落葉が発生します。排水口は詰まり、大雨時にはオーバーフローが確認されています。この状態は、単なる「樋の掃除不足」ではなく、建物の耐久性に直結する重要な問題でと判断しました。

現地状況

  • 広葉樹が屋根上に覆いかぶさっている
    落葉量が非常に多く、秋季に排水口へ集中する構造になっています。
  • 排水口(集水器)が詰まっている
    水が縦樋へ流れず、軒樋内に滞留しています。
  • 大雨時にオーバーフローが発生
    樋の縁を越えて外壁側へ直接水が流れ出ています。大雨時には、窓や壁に大量の水が当たっていると推測します。
  • 下部に雑草が繁茂している
    定期的な掃除・管理がされていない可能性が高い状態です。

放置すると起こること

 このような状況でこのまま放置されるとどういう事になるのか、考察してみます。

  • 外壁の急速な劣化
    大雨が降り、本来想定していない水量が外壁に当たり続けることで、塗膜剥離・ひび割れ・目地劣化が加速します。
  • サッシ廻りからの浸水リスク増大
    水は少しの隙間から内部に侵入します。特にサッシ上部やシーリング切れ部分、壁のひび割れは危険箇所です。
  • 壁内部の構造材腐朽
    水が防水層を越えて内部に侵入すると、柱・間柱・土台が腐り、耐震性能が低下します。特に築古であれば、内部の防水層(アスファルトルーフィング)が劣化して、破損されていることも考えられます。
  • 軒裏・鼻隠しの腐食
    軒裏の野地板や軒先・鼻隠しが含水し、部分補修では済まなくなる可能性があります。また、軒先・鼻隠しが腐食すると樋を固定している金物が腐食して、さらに軒樋が垂れ下がり、オーバーフローする水量が大きくなります。
  • シロアリ被害の誘発
    湿気を帯びた木部はシロアリにとって好条件です。築35年は特に注意が必要です。

改善策(優先順位順)

 樋がオーバーフローするというのは家に深刻なダメージを与えますので、そうならないよう改善が必要となります。その改善策を考察します。

  • 落葉・排水口の即時清掃
    まずは物理的に詰まりを除去し、通水確認を行います。
  • 落葉防止対策の設置
    落葉除けネットやストレーナーを設置し、再発防止を図ります。
  • 隣接樹木の剪定
    可能であれば枝を整理し、落葉量を減らします。
  • 軒樋の勾配・固定状況確認
    長年の変形により水が流れにくくなっている場合があります。
  • 築年数を踏まえた樋交換の検討
    樹脂製樋であれば寿命域に入っている可能性が高く、全面交換が合理的な場合もあります。
  • 外壁・サッシ廻りの詳細点検
    必要に応じて散水試験を行い、二次防水層の状態を確認します。

購入検討時のチェックポイント

 このような状況の中古物件というのは多々あります。もし、このような状況の物件であれば、特に注意すべきことがあります。

  • 軒裏のシミ・変色の有無
    軒裏に茶色い染みがあれば、オーバーフローして過去に水が回った可能性があります。
  • 外壁目地の割れや膨れ
    水が集中していた痕跡がないか確認します。特に壁にひび割れがある場合は要注意です。
  • 室内天井・窓上部の染み
    外部からの浸水が室内に影響していないかチェックします。天井・壁の上部、窓廻りを特に重点的にチェックします。
  • 小屋裏・天井裏の状況確認
    点検口から小屋裏・天井裏、壁内部状況を確認することが必要です。
  • 基礎周囲の湿気・土壌状況
    オーバーフロー水が基礎際に集中していないか確認します。長期間い渡り、特に基礎と外壁の取り合い部分に水が当たっている痕跡があれば、土台まで腐食していることも考えられますので、特に注意が必要です。

購入判断の考え方

築35年の木造住宅で発生した軒樋の詰まりとオーバーフロー事例を解説。落葉による排水不良が外壁劣化や雨漏り、構造腐朽へ発展するリスクとは何か。改善策や購入時のチェックポイント、買ってよいケース・慎重に検討すべき判断基準まで、専門家の視点で詳しく説明します。

 このような軒樋の詰まりが確認された住宅であっても、必ずしも購入を断念しなければならないわけではありません。構造材に腐朽が見られず、壁内への浸水履歴も確認されない場合には、軒樋の清掃や部分的な交換、必要に応じた外壁の補修によって十分に改善できる可能性があります。つまり、問題が「排水管理の不備」にとどまっている段階であれば、適切なメンテナンスによってリスクをコントロールできるケースも多いのです。このような場合は、補修内容と費用を明確にしたうえで、購入を前向きに検討することができるでしょう。

 一方で、壁内部の構造材に腐朽が生じていたり、シロアリ被害が確認されたりした場合には、話は大きく変わります。水が長期間にわたり内部へ回っていた可能性が高く、表面的な補修では済まないことがあります。構造材の交換や大規模な外壁解体が必要になると、補修費用は想定以上に高額になることもあります。その費用と物件価格を総合的に比較した結果、経済合理性が見合わないと判断される場合には、無理に購入せず見合わせるという選択も重要です。購入の可否は、「直せるかどうか」だけでなく、「どの程度の負担で直せるか」を冷静に見極めることが大切なのです。

この事例から学ぶこと

 軒樋の詰まりは、決して軽く考えてよい問題ではありません。雨水は本来、屋根から軒樋、縦樋を通って安全に地面へ排水されるよう計画されています。しかし、その流れが滞ると、水は行き場を失い、外壁やサッシ廻りへとあふれ出します。水の管理が崩れるということは、単なる排水不良にとどまらず、外壁の劣化や雨漏り、さらには構造材の腐朽へとつながる可能性があるということです。小さな詰まりが、建物全体の耐久性を左右する問題へと発展することもあるのです。

 また、広葉樹が隣接している環境では、落葉による詰まりは一時的なトラブルではなく、毎年繰り返される継続的なリスクとなります。秋になるたびに大量の葉が樋に入り込むため、対策を講じなければ同じ問題が再発します。したがって、「一度掃除したから安心」という考えではなく、落葉量を見越した管理計画を立てることが重要です。必要に応じて落葉除けの設置や樹木の剪定を行うなど、環境に合わせた対策が求められます。

 そして、最も効果的な予防策は定期的な点検と清掃です。少なくとも年2回、特に落葉後の秋と台風シーズン後には必ず確認することが望ましいでしょう。早期に詰まりを発見し除去すれば、オーバーフローや雨漏りといった深刻な被害を未然に防ぐことができます。建物を長く安全に保つためには、「壊れてから直す」のではなく、「壊れる前に整える」という意識が何よりも大切なのです。

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